事業戦略

事業計画書を新しく書いていませんか — すでに作ったものをつなぐ方法

STAR-T
2026-08-12
5分読む
#事業計画書#公的支援事業#実践ガイド#一人起業

事業計画書を毎回一から書くことになるのは、資料がないからではなく、成果物同士がお互いを根拠にしていないからです。顧客定義から要件までの5つのマスを「だから」でつなぐ方法をまとめました。

事業計画書を新しく書いていませんか — すでに作ったものをつなぐ方法

公募の締め切りまであと1週間です。事業計画書を開いて、一から書いています。

でも、この数か月で作ったものは少なくありません。顧客定義もしてみましたし、画面も描いてみましたし、インタビューもしました。ファイルは全部あります。

それなのに、事業計画書にはそのどれもがそのままでは入りません。結局、新しく書くことになります。

なぜ書き直すことになるのか

成果物がないからではありません。成果物同士がお互いを根拠にしていないからです。

  • ペルソナ文書には、顧客がどんな人かが書かれています。
  • 機能リストには、何を作るかが書かれています。
  • しかしその顧客だからこの機能が先だというつながりは、どこにも書かれていません。

それぞれはよくできているのに、ばらばらなのです。だから事業計画書に移そうとすると、移すのではなく、その場で論理を新しく組み立てることになります。時間がかかるのは文書作成ではなく、なかったつながりを急いで作る作業です。

審査員が問うのは途切れた箇所です

発表の場で出る質問は、だいたい決まっています。

「この機能はどこから出てきたのですか?」
「この顧客は本当にこれを必要としていますか?」
「なぜこれを先に作るのですか?」

3つの質問は、どれも同じことを聞いています。前の段階と後の段階の間がつながっているかです。

機能が多くても説得力が出ないのは、ここに原因があります。機能そのものが足りないのではなく、その機能がどこから出てきたのかが文書にないからです。

一文でつないでみる

作ったものの間にこの文を入れてみると、途切れた箇所が見えてきます。

「○○だから△△を作る。」

全体をつなぐと、次のような鎖になります。

  1. 顧客はこういう状況にあり —(顧客定義)
  2. その状況でここでつまずいていて —(ジャーニー・課題定義)
  3. 本当につまずいているか確かめてみて —(インタビュー・検証)
  4. だからこれを先に作り —(機能の優先順位)
  5. こうやって作る —(画面・要件)

1マスずつ「だから」で次に進めるかを読んでみてください。「だから」がつながらない箇所が、途切れた箇所です。

よく途切れる箇所の一つが、3番と4番の間です。インタビューはしたのに、その結果が機能の優先順位を変えなかったケースです。この場合、4番はインタビューの前にすでに決まっていたもので、3番は後から付けた飾りになります。審査ではこの点がよく表に出ます。

事業計画書はこの鎖の形式を変えただけのものです

多くの事業計画書の様式は、この順序と大きくは変わりません。名前が違うだけです。

  • 課題認識 ← 1番 + 2番(顧客がこういう状況にあり、ここでつまずく)
  • 実現可能性 / 根拠 ← 3番(確かめてみた)
  • 開発計画 / 優先順位 ← 4番(だからこれを先に作る)
  • 製品概要 ← 5番(こうやって作る)
  • 市場・競合 ← 1番の拡張(こういう顧客がどれくらいいるか)

鎖がつながっていれば、移す作業になります。つながっていなければ書く作業になり、だから時間がかかります。

提案書も構造は似ています。受け取る人が審査員から顧客企業に変わるだけで、「なぜこれをこの順序でやるのか」を問われるのは同じです。

つながらないマスが教えてくれること

鎖を描いてみると空欄が出てきます。空欄を急いで埋める前に、その空欄がどんな種類なのかを一度見ておくとよいです。

  • 1→2がつながらない — 顧客は決めたのに、その顧客の課題ではなく、自分が知っている課題を書いてしまったケースです。
  • 2→3がつながらない — 課題は定義したのに、確認はしていないケースです。今できるいちばん小さな確認が何かを決めればよいです。
  • 3→4がつながらない — 確認の結果が優先順位に反映されていないケースです。確認してわかったことのうち、計画を変えたものが一つでもあるかを見てみてください。
  • 4→5がつながらない — 優先順位は決めたのに、作るものの範囲が決まっていないケースです。

空欄は文書の欠陥というより、まだやっていない仕事のリストに近いものです。それを知って締め切りを迎えるのと、知らずに迎えるのとでは違います。

AIに任せるとき

すでに作ったファイルを入れて「事業計画書を書いて」と頼むと、AIは空いたところをもっともらしい文章で埋めます。鎖が途切れた箇所も、なめらかにつながっているかのように書かれます。読むぶんには良く見えますが、質問が来るとその場で詰まります。

次のように頼むと、違う結果が出てきます。

「これらの文書を読んで、各機能がどの顧客課題から出てきたのかをつないでください。文書の中に根拠が見つからない機能は『根拠なし』と表示し、作り話はしないでください。

『根拠なし』の表示が多く出るのは悪い結果ではありません。そのリストが発表前に埋めるべきものです。

今日一つだけやるなら

いま作っている機能のうち一つだけを選び、上へとさかのぼってみてください。

この機能 ← なぜ? ← どんな課題のために ← その課題は誰が抱えているか ← それをどう確かめたか

4回以内に確かめた事実までたどり着けば、その機能は事業計画書に書けます。途中で途切れたら、その途切れた箇所がいま埋めるべきマスです。


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脚注

① 参考資料・確認日
この記事は外部の統計・研究を引用していません。根拠は、起業予定者への個別コンサルティング500件以上の累積(経歴SSOT基準)です。本文では数値を使っていません。確認日 2026-08-06。

② 使わなかった数値
「事業計画書の通過率」「公的支援事業の採択率」のような数値は使っていません。私たちが測定した値ではなく、公募や分野ごとにばらつきが大きいため一般化できないからです。私たちの講義・コンサルティングの満足度や実績の数値、社内アンケート・CS回答の数値や直接の引用も、この記事では使っていません。

③ 作り方
AIで下書きを作り、人が検証・編集しました。公開前に事実・トーン・法務の3つの検収を経ています。

Engagement

閲覧数とリアクションは内部コンテンツ運用指標として保存されます。

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要点

  • 事業計画書の作成に時間がかかるのは、文書を書く時間ではなく、成果物の間になかったつながりをその場で急いで作る時間のためです。
  • 顧客定義・課題定義・検証・機能の優先順位・要件の5つのマスを「だから」でつないで読むと、途切れた箇所が見えてきます。
  • よく途切れる箇所の一つは検証と機能の優先順位の間で、確認の結果が計画を変えなかったなら、検証は後から付けた飾りになっています。
  • 事業計画書の様式にある課題認識・根拠・開発計画・製品概要はこの鎖と名前が違うだけなので、鎖がつながっていれば書く作業ではなく移す作業になります。
  • AIに資料を渡して事業計画書を任せると途切れた箇所もなめらかに埋めてしまうため、根拠が見つからない機能は「根拠なし」と表示し、作り話をしないよう頼む必要があります。

よくある質問

資料はたくさんあるのに、事業計画書を書くたびに一から書くことになります。なぜでしょうか?

成果物同士がお互いを根拠にしていないからかもしれません。顧客定義と機能リストがそれぞれ存在しても、「この顧客だからこの機能が先だ」というつながりが文書になければ、移す代わりにその場で論理を新しく組み立てることになります。

審査で「この機能はどこから出てきたのですか」と質問されました。何を補えばよいですか?

その機能から逆にさかのぼってみるとよいです。なぜ必要なのか、どんな課題のためか、その課題は誰が抱えているか、それをどう確かめたか。4段階以内に実際に確かめた事実までたどり着かないなら、その間が空いているということです。

AIで事業計画書の下書きを作ってもよいですか?

下書きの作成には役立ちます。ただし資料をそのまま入れて任せると、根拠のない部分もなめらかに埋められてしまうため、各機能がどの顧客課題から出てきたのかをつながせ、根拠が見つからない項目は「根拠なし」と表示するよう頼むほうがよいです。

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STAR-T代表コンサルタント

ITサービス企画・デザイン専門家として、様々なスタートアップと企業の成功事例を研究・共有しています。

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