事業戦略

同じ危機で生き残った企業と消えた企業、その4つの分岐点

STAR-T
2026-07-27
6分読む
#戦略#事業#意思決定#ケーススタディ

コダックと富士フイルムは、同じ時期に同じ衝撃(デジタルカメラ)を受けました。一方は破産し、もう一方は今も化粧品・医療の会社として成長を続けています。両社の技術力にはほとんど差がありませんでした。分かれ目になったのは**一つの決断**でした。

同じ危機で生き残った企業と消えた企業、その4つの分岐点

同じ危機で生き残った企業と消えた企業、その4つの分岐点

コダックと富士フイルムは、同じ時期に同じ衝撃(デジタルカメラ)を受けました。 一方は破産し、もう一方は今も化粧品・医療の会社として成長を続けています。 両社の技術力にはほとんど差がありませんでした。分かれ目になったのは一つの決断でした。

大企業の戦略事例を読むいちばん高くつく方法は、「すごい」で終わらせることです。いちばん安く済む方法は、その決断を自分の事業判断を映す鏡として使うことです。数千億規模が投じられた意思決定の実験結果を、私たちは無料で学ぶことができます。

今回は、同じ危機で運命が分かれた4つの企業を見ていきます。各事例の最後に、一人起業家・創業者がそのまま使える問いを一つずつ残します。

1. コダック vs 富士フイルム ——「収益源を自ら断てるか」

コダックのエンジニア、スティーブン・サッソンは1975年に世界初のデジタルカメラを作りました。コダックはこの技術で特許まで取りましたが、市場には出しませんでした。[^1]「フィルムの売上が惜しくてデジタルを隠した」という通説は、実は誇張です —— 1975年当時は製品も未成熟で市場もなく、コダックもその後デジタルカメラを開発しています。より正確な真実は、フィルムという巨大な収益源がデジタルへの大胆な転換を遅らせたということです。結局、コダックは2012年に破産しました。[^2]

富士フイルムは同じ危機で逆の道を選びました。フィルム売上の急減を前提に置き、フィルムに使っていた化学技術(コラーゲン・抗酸化・ナノ)を化粧品(アスタリフト、2007年)と医療画像へ移したのです。中核資産は「フィルム」ではなく「化学技術」だと再定義したわけです。[^2]

あなたの事業への問い:今いちばん稼いでいる収益源が、3年後にあなたの足かせになるとしたら —— あなたはそれを自ら縮小する決断を下せますか?

2. ネットフリックス ——「うまくいっている事業にメスを入れるとき」

ネットフリックスは、DVDの郵送レンタルで黒字を出していた2007年に、ストリーミングへの投資を始めました。さらに決定的だったのは2011年、DVD事業とストリーミングを分け、DVDを別ブランド(クイックスター)として切り離そうとして加入者80万人が離れた出来事です。クイックスターは23日で撤回され、この出来事を含む2011年の1年間で株価は約80%下落しました。23日でクイックスターは撤回されました。[^3]

実行は荒削りでしたが、方向は正しかったのです。ネットフリックスは「私たちはDVDの会社ではなく、コンテンツを届ける会社だ」という定義を最後まで押し通し、やがて自社制作(ハウス・オブ・カード)へ進みました。核心は、うまくいっている現在の事業を、未来のほうが大きいという理由で自ら揺さぶったことです。

あなたの事業への問い:今の売上の80%をもたらしている仕事は、あなたが本当に進みたい方向と同じですか? 違うなら、いつ揺さぶりますか?

3. ノキア ——「首位の資産が首位の足かせになるとき」

2007年、ノキアは携帯電話市場の首位でした。携帯電話全体で約40%と、圧倒的でした。ところがスマートフォンのシェアは2007年の48.7%から2013年には3.1%まで崩れ、結局2013年に携帯電話事業をマイクロソフトに72億ドル(約54.4億ユーロ)で売却します。頂点から売却まで約6年でした。

表向きの理由は「iPhoneに追いつけなかった」ですが、実際には自社が持つ最大の資産(Symbian OS、ハードウェアの生産規模)が意思決定を縛っていました。持っているものが多すぎて、捨てられなかったのです。(この事例は第3回で単独で詳しく扱います。)

あなたの事業への問い:あなたがいちばん誇りに思っている資産(既存顧客、既存のやり方、積み上げてきたノウハウ)が、次の段階へ進むのを妨げてはいませんか?

4. マイクロソフト ——「アイデンティティを変えた決断」

2014年にサティア・ナデラがCEOに就任したとき、マイクロソフトは「Windowsの会社」でした。すべての決断がWindowsを守る方向へ曲がっていました。ナデラはアイデンティティを「クラウド・サブスクリプションの会社」へと書き換え、誇りのように扱っていたOfficeを、競合のiOS・Androidに先に開放しました。

Windowsを守る会社のままだったら、決してできなかった決断です。会社の定義を変えると、取りうる決断の幅が広がりました。

あなたの事業への問い:あなたは自分を、何をする人だと定義していますか? その定義が、あなたが下せる決断の範囲を決めます。

4つの事例を貫く一文

4社の分かれ道は、技術力でも、資本でも、市場情報でもありませんでした。自社の資産を再定義できたかどうかでした。

  • 富士フイルム:資産を「フィルム」ではなく「化学技術」と再定義 → 生存
  • ネットフリックス:「配送の会社」ではなく「コンテンツを届ける会社」 → 転換
  • ノキア:「携帯電話首位」という定義に閉じこもった → 崩壊
  • マイクロソフト:「Windowsの会社」を「クラウドの会社」へ → 復活

一人起業家にとって、これはむしろ幸いな知らせです。私たちには守るべき資産が少ないからです。コダックとノキアが捨てられなかったのは、持っているものが多すぎたからです。持っているものが少ないとき、方向を変える決断ははるかに安く、速くなります。

今日一つだけやるなら

紙を一枚取り出して、書き出してみましょう。

  1. 今、自分の事業でいちばん稼いでいるもの(またはいちばん自信のあるもの)は何か?
  2. それを3年後もそのまま持ち続けるのか?
  3. そうでないなら —— 何を「本当の自分の資産」として再定義すべきか?

この3つの問いで行き詰まったら、一人で悩むより、一度一緒に整理してみるほうが早いです。

無料相談を申し込む → あなたの事業資産を再定義する1時間。


出典(✅ 検証済み、WebSearch 2026-06-01)

[^1]: コダックのエンジニア、スティーブン・サッソンが1975年に世界初のデジタルカメラを製作・特許取得(1978年)。「フィルムを守るために隠した」は誇張 —— 当時は未成熟で市場も存在せず、コダックも1991年に商用デジタルカメラを発売。 —— IEEE Spectrum · Snopes. https://spectrum.ieee.org/first-digital-camera-history [^2]: 富士フイルム —— フィルム技術(コラーゲン・抗酸化・ナノ)をアスタリフト化粧品(2006〜2007年)・医療画像へ転換して生存。コダックは2012年に破産。 —— Harvard d3 · Nippon.com. https://www.nippon.com/en/features/c00511/ [^3]: ネットフリックスのクイックスター —— 2011年のDVD/ストリーミング分離の試み → 加入者80万人減、株価約80%急落、23日で撤回。 —— Washington Post · NPR. https://www.npr.org/sections/thetwo-way/2011/10/10/141209082/ [^4]: マイクロソフト —— 2014年のナデラ就任後、「Windowsの会社」を「クラウド・サブスクリプション」へ再定義し、OfficeをiOS/Androidに公開。(広く記録されている事実。Nadella, Hit Refresh。)

次回:世界の戦略家4人(ポーター・クリステンセン・ルメルト・BCG)のレンズで、「自分の事業は今どのマスにいるのか」を実際に診断します。


今、私たちの事業はどの分岐点に立っているでしょうか?
2分の診断で、今いちばん先に構造化すべきポイントを確認できます。答えられる範囲だけで大丈夫です。

STAR-T AI事業運営診断 →

Engagement

閲覧数とリアクションは内部コンテンツ運用指標として保存されます。

0 views

要点

  • コダックと富士フイルムは同じデジタルの衝撃を受けましたが、富士フイルムは自社の資産を「フィルム」ではなく「化学技術」と再定義して化粧品・医療画像へ移り、コダックは2012年に破産しました。
  • コダックが1975年に世界初のデジタルカメラを隠したという通説は誇張であり、より正確な原因はフィルムという巨大な収益源が転換を遅らせたことだと整理しています。
  • ネットフリックスはDVDで黒字を出していた2007年にストリーミングへの投資を始め、2011年のクイックスター分離の試みで加入者80万人が離脱し株価が約80%下落すると、23日で撤回しました。
  • ノキアは2007年に携帯電話市場で約40%のシェアを持つ首位でしたが、スマートフォンのシェアは48.7%(2007年)から3.1%(2013年)へ崩れ、2013年に携帯電話事業をマイクロソフトに72億ドルで売却しました。
  • 4社の分かれ目は技術力・資本・情報ではなく、「自社の資産を再定義できたかどうか」だったと結論づけています。

よくある質問

コダックはデジタルカメラを知りながら隠したのですか?

本記事はその通説を誇張と見ています。1975年当時は製品が未成熟で市場もなく、コダックもその後デジタルカメラを開発しました。より正確な説明は、フィルムという大きな収益源がデジタルへの大胆な転換を遅らせたというものです。

富士フイルムはどのように生き残ったのですか?

フィルム売上の急減を前提に置き、フィルムに使っていた化学技術(コラーゲン・抗酸化・ナノ)を化粧品と医療画像へ移しました。中核資産を「フィルム」ではなく「化学技術」と再定義した決断が分岐点でした。

この事例を一人起業家はどう活かせばよいですか?

今いちばん稼いでいる収益源が3年後に足かせになるとしたら、自分でそれを縮小できるかを問うことから始めます。本記事は、持っている資産が少ないほど方向転換の決断が安く速くなる点を、一人起業家の利点と捉えています。

読んで終わらず、今すぐ実行できるサービスや相談へ。

インサイトで課題を理解したら、次のステップは実行構造を決めることです。関連サービスや無料ミーティングへすぐに進めます。

無料ミーティング/相談依頼
S

STAR-T

STAR-T代表コンサルタント

ITサービス企画・デザイン専門家として、様々なスタートアップと企業の成功事例を研究・共有しています。

今すぐ実行へ

読んで終わらず、今すぐ実行できるサービスや相談へ。

インサイトで課題を理解したら、次のステップは実行構造を決めることです。関連サービスや無料ミーティングへすぐに進めます。